私たちは、古い建物や建築現場から出た材料を「ゴミ」だとは思っていません。
しかし実際は、建築現場から出る廃材(端材)を、お金を払って処分してもらっていました。
これって、実はすごくもったいないことなのではないだろうか?
廃材(端材)も、人によっては価値のあるものなのではないか?
あるとき、そんなことを考えるようになったのです。
2020年9月,、現在の戸田オフィス(本社)に引っ越したことを機に、オフィス前に廃材(端材)を並べ、自由に持って帰ってもらえるようにしました。
また2021年7月からは、東京都板橋区にある「八槻木工所」さんで出た廃材(端材)もその場に並べています。
「八槻木工所」さんは、家具製作の会社です。サンクジャパンから出る廃材(端材)とは異なるテイストのものもあり、オフィス前に並ぶ廃材(端材)のバリエーションが増えました。
「廃材リサイクル」は、近隣の方々にも少しずつ認知していただけるようになり、これまでにそこから派生した出会いもありました。
今回は、廃材リサイクルで広がった「笑顔のネットワーク」の一部をご紹介いたします。
課題制作に廃材・端材を活用した大学生たち
2021年6月、近隣にお住いの美大生の方から1通のメールが届きました。
「授業の課題制作として、建築廃材を活用して新たな製品を生み出すことを考えています。先日サンクジャパン事務所の前を通った時に、<TAKE FREE!! ご自由にお持ち帰りください>というメッセージとともに、廃材が並んでいるのを見て、材料提供をお願いしたく連絡しました。」
この嬉しい申し出に、私たちはすぐにメール返信。もちろん、廃材(端材)を提供させていただきました。
課題制作のテーマは、「廃材を使って新たな製品を生み出す、且つその製品を使うことでモノを減らせる」。
完成した作品は、廃材の集成材の板から切り出した部材を、圧着して作ったトレイでした。
当初は「廃材を使った調味料入れ」を作る予定でしたが、試行錯誤する中で「廃材を使ったトレイ」を作ることにしたようです。
種類の違う木材を使用した繊細なデザインと、木のぬくもりが感じられる作品。集成材の断面を活かしたデザインは、講評会でも好評を得たそうです。
2022年8月、再び、大学生から「卒業制作に廃材を利用したい」と相談がありました。
卒業課題のテーマは、「建設廃棄物を利用したアップサイクル製品とそのブランド化の提案」でした。
提供した廃材(端材)を使った作品は、「Bird chess(バードチェス)」。
駒のモチーフが、国内希少野生動物種に指定されている6種の鳥類になっているチェスです。「Bird chess」には、この玩具が環境問題に対する学びのきっかけとなればというメッセージが込められていました。
ブランド名は、「COPPA-UP(こっぱあっぷ)」。木の切れ端、 取るに足りないものを意味する「木端(こっぱ)」と「アップサイクル」を掛け合わせた造語です。
「bird chess」の優れた点は、そのメッセージだけではありませんでした。チェス盤と駒、収納用の木箱がセットになっていて持ち運びしやすい機能性。そして、まとめてしまえる収納性を兼ね備えています。
また、着彩には水性ステイン、仕上げには木製食器用のオイルを使用しています。金具さえ取り除けば、余計なエネルギーを使うことなく土に還すことができます。
素材の使い方、拘り、デザイン、バランス、そして文脈。全てにおいて上手く仕上がっていることに驚きました。
戸田第一小学校5年生の総合学習の「木材ロスプロジェクト」への廃材提供
2022年10月、戸田第一小学校5年生の総合学習の「木材ロスプロジェクト」への廃材提供と加工アドバイスの相談がありました。
地球環境(木材ロスやゴミ問題など)を考えた「ブックスタンド 女子チーム」、「海を守ろうプロジェクト 女子チーム」、そして「ペットボトルを潰して捨てるゴミ箱 男子チーム」に現場から出る廃材(端材)を提供させていただきました。
「ブックスタンド 女子チーム」が作ったブックスタンドも、そして「海を守ろうプロジェクト 女子チーム」が作ったキーホルダーも、とても上手で可愛らしいものでした。
制作過程で少しだけ苦戦していた「ペットボトルを潰して捨てるゴミ箱 男子チーム」からは、アドバイスが欲しいとの連絡もあって、製作のアドバイスをさせていただきました。
これらの取組みの成果は、2023年3月12日に開催された「戸田朝市」にてお披露目。苦戦しながらも最後まで諦めず取り組んだ子どもたち。笑顔が眩しいほどに輝いていたのが印象的です。
このとき5年生だった子たちも、今は6年生。今年も同様の取組みをすることとなり、協力させていただいています。
広がれ! 「笑顔のネットワーク」!
サンクジャパンとしても、もちろん廃材(端材)の利活用を行っています。
2021年7月に埼玉県SDGsパートナーに登録。2025年までに廃材(端材)の10%を再利用することを目指しています。
2022年からは、廃材を使用した板材整理棚、駐車場の表示板の作成など、造作物内製化も進めています。
「廃材リサイクル」という小さな取り組みですが、これは私たちが「古い建物を解体するのではなく、生まれ変わらせて残したい」という想いに通じるものがあると考えています。
「廃材リサイクル」をスタートさせてから約3年。DIY好きな方が多いのか、近隣の方々と接する機会が増えたように感じます。嬉しいことに、直接御礼のお言葉をいただくこともあります。
「廃材(端材)も、人によっては価値のあるものなのではないか?」
今から約3年前、ふとそんなことを考えスタートした「廃材リサイクル」は、確実に周囲の方々に喜んでもらえていると実感しています。
私たちサンクジャパンは、「人の笑顔を生む建物」を造っています。その建築廃材を提供することで、持ち帰り、趣味のDIYや工作をして笑顔になる人たちがいます。そして、その工作物を見たり使ったりして笑顔になる人もいます。
処分されていた廃材(端材)で、近隣の人々の笑顔が連鎖する。こんなご機嫌なサイクルがあるでしょうか?
今後も、この「笑顔のネットワーク」が広がっていく仕組みをつくって行きたいと考えています。
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